イスラム教徒のラマダンについて詳しく知りたい!
ラマダンの期間は、イスラム諸国は旅行はできないの?
この記事では、海外添乗員として世界103カ国を訪問し、ラマダン中のイスラム圏にも渡航経験がある私が、あなたのこんな疑問を解決します。
ズバリ、
ラマダン中でもイスラム圏を旅行することは可能です!
ラマダン期間中にイスラム圏を旅行することは、普段は見られない文化や習慣に触れたり、イスラム教についてより深く知る良い機会になります。
一方で、知っておかないとビックリしたり、ガッカリすることも少なくありません。
また、知らなかったばかりに、相手への配慮を欠いてしまってトラブルに発展することにもなきにしもあらず。
2023 年、2024年のラマダンは、ちょうど春休みの時期と重なります。
旅行とラマダンが重なりそうな人だけではなく、これからイスラム諸国への旅行を計画している人も、ぜひこの機会に、ラマダンについて理解を深めてみましょう。
- ラマダンとは?期間やルールは?
- ラマダンの効果や意味
- ラマダン中の生活や禁止事項
- ラマダン中の観光地はどうなる?
- ラマダン中に旅行者が気を付けること
ツアー中にお客様に案内するためにまとめた情報や、ガイドさんから聞いた話、実際にラマダン期間中に現地を訪問した体験をもとに、分かりやすくまとめています。
ラマダンとは?実は禁止事項がたくさん?!
ラマダンとは、イスラム教の信者に定められた、約1ヶ月間の断食を行う大切な月のことです。
「断食」というと、何日も飲まず食わずの状態を続けることだと思っている人が多いかもしれません。
しかし、実際は、ラマダンの期間中の日の出から日没までのあいだ、飲食を断つ行為で、日が沈めば、食べたり飲んだりできます。
日が沈むとともに、家族や友人たちが集まって、断食が終わったことを喜び合い、みんなで食事を楽しみます。
町には屋台も出て、夜遅くまで賑わっているところも多いです。
普段、夜は出歩かない女性たちも、ラマダンの期間は外出している女性も結構見かけました。
イスラム教徒によるラマダン月の断食は、飲食だけではなく、喫煙や投薬(例外もあり)、性行為、喧嘩などの悪い行いもいっさい断つことが求められます。
- 飲食(水を飲むのもダメ)
- たばこ
- 飲酒(基本的に、イスラム教徒は飲酒できない)
- 投薬(例外あり)
- 性行為
- 喧嘩・言い争い
【なぜ?】断食はイスラム五行のひとつ
ズバリ、
イスラム教には「五行」という5つの修業があり、断食は、そのうちのひとつだからです。
イスラム教徒が、1日に5回のお祈りをすることはよく知られていますが、それも五行のひとつです。
- 信仰告白(シャハーダ)
- 礼拝(サラー)
- 喜捨(ザカート)
- 断食(サウム)
- 巡礼(ハッジ)
この五行は、イスラム教徒であれば必ず守らなければいけない「義務」とされています。
ラマダンをする目的・効果
ラマダン月に断食をする目的は、欲を戒め、自分を清めて信仰心を強めるためです。
そもそも、ラマダンという言葉は、イスラム教徒が採用しているヒジュラ歴という暦の「第9番目の月」のことを差します。
この月に、イスラム教の聖典である「コーラン」が預言者に掲示されたことから、イスラム教徒にとって最も重要な聖なる月となりました。
この神聖な月に祈りに集中するよう、断食するのです。
たばこや性欲、言い争いなど、その他の一切の欲望も断つことによって、神への献身と奉仕に没頭することができるとされています。
また、空腹や我慢を経験することで、貧しい人や飢えた人に対して共感をはぐくみ、平等を感じることも断食の目的です。
ラマダンでは、信仰と感謝を深めると同時に、家族や友人と過ごす大切な時期でもあり、同じく苦しみに耐える信徒の連帯感が強まる効果もあるのだそうです。
ラマダンは、自身を清めて信仰心を高めると同時に、イスラム教徒同士が助け合う期間ともいえます。
【いつ?】2023年はいつ?/ラマダンの時期は〇〇の見え方次第
2023年のラマダンは3月22~4月20日とされています。
「されている」というのは、正確には決まっていないからです。
というのも、ラマダン月の開始日と終了日は「新月の観測状況」によって決まります。
はじめの新月が確認できた時にはじまり、次の新月が見えたら終了です。
新月が見えるかどうかは、聖職者が目視で確認し、メディアで発表します。
くもりや雨で月が確認できないと、開始や終了が翌日に延びることもあるんですよ。
何事もカッチリ予定が決まっていないとスッキリしない日本人には、ちょっと信じられない決め方ですね。
当然、月の見え方は場所によっても異なるため、国によって前後したり、同じ国でも地域によってズレが生じることもあるようです。
ラマダンは、イスラム教が採用しているヒジュラ歴の9番目の月ですが、このヒジュラ歴は太陰暦で、1年は354日です。
つまり、国際的に利用されている太陽暦と11日間ズレています。
そのため、毎年ラマダンの時期は11日間ずつ前倒しにずれていきます。
イスラム圏の旅行を計画する際には、ラマダン月に当たらないか、念のため確かめたほうがよいでしょう。
ラマダンはイスラム教徒以外でもできる?
ラマダンの断食は、イスラム教徒には義務付けられた修行ですが、イスラム教徒でなくとも誰でも参加できます。
じつは私、旅行会社に勤務中に、現地手配会社のイスラム教徒に勧められて、同僚とラマダンに挑戦したことがあるんです。
感想は…
空腹はとても辛くて、3日間と続きませんでした…
とはいえ、断食後に食べる食事がとってもおいしくて、味覚も研ぎ澄まされた感じがしました!
まわりに食事をしている人がいたり、いつでもコンビニで食べ物が買える環境で断食をしなければいけないのはとっても過酷だなと感じました。
【何歳から?】子どもはラマダンで断食する?断食が免除される人は〇〇
子どもが断食を始める年齢は特別に決まっているわけではなく、自分の意思でいつからはじめるか決められます。
子どもが断食をはじめるときは、最初から1ヵ月間するのではなく、3日に1回など、少しずつ慣らしていきます。
平均は10歳前後からですが、早いと7歳くらいから行っている場合もあるようです。
基本的に誰でも参加できるラマダンですが、断食が免除されている人もいます。
乳幼児や子ども、重い病気の人たちは、断食は免除され、代わりに貧しい人への「施し」を行います。
また、生理中の女性も断食はできません。生理中の女性は不浄とされており、ラマダンだけでなく、モスクに入ってお祈りをすることも許されません。
妊娠中や授乳中、旅行中などで一時的にラマダンが出来ない場合も免除され、翌年のラマダンまでに出来なかった日数分断食をすればよいことになっています。
- 乳幼児や子ども
- 重病人
- 生理中
- 妊娠中・授乳中
- 旅行中
実際、ラマダン中に添乗員としてツアーに同行した際には、ガイドさんは私たちと一緒に食事を摂っていました。
「このツアーが終わったら、その分の断食をするよ」と言っていたので、状況によってある程度融通は効くようです。
時期をずらしてもよい、というのは現実的でよいなと印象に残っています。
「旅行中」も免除されているのは、預言者ムハンマドが「旅行中は断食をすべきではない」と説いているからです。
2012年のロンドンオリンピックの際には、オリンピックとラマダン時期が重なりました。
イスラム諸国の選手団の食事事情がクローズアップされましたが、選手たちは「旅行中」ということで、通常通り飲食をして競技に臨んでいました。
ラマダン中はやせる?太る?ラマダン中の食事事情
ラマダン中の日中から日没にかけては、一切の飲食を断ちますが、日没後から日の出までは食事をしてもかまいません。
ここでは、ラマダンに関する食事事情について紹介します。
イフタール:断食明けの食事
イフタールは、断食明けに食べる大切な食事です。
半日以上、飲食を断ったあとなので、胃腸がびっくりしないように、はじめに水分やデーツ(ナツメヤシ)を食べ、その後,郷土料理などがふるまわれます。
預言者ムハンマドがデーツで断食を解くように伝えていますが、デーツは断食後の安定した血糖値コントロールができることから、断食後の回復食として実益をかねています。
イフタールは、家族や友人と一緒に過ごしす大切な時間として、ラマダンの期間のイスラム教徒たちの楽しみになっています。
また、断食が終わったお祝いから、ご馳走がふるまわれることが多く、日没後にたっぷりと食事を摂る人が多いです。
サフール:断食までの食事
サフールは、断食がはじまる前、つまり日の出前に食べる食事のことで、午前2時〜午前3時30分ころに食べるのが一般的です。
とても朝早いので、食べ損なわないように、ボランティアが叫んだり鳴らしものを使って、近所の住民を起こして回る国もあります。
サフールも、おかゆやヨーグルトなど、消化に良いものを食べます。
意外?ラマダンで断食中なのに太る?!
日中は一切の飲食を断っていますが、日没後にご馳走を食べ、そのまま寝て、また食べて…
という生活を1か月続けるので、実はラマダン中に太ってしまう人が多いんだとか。
普段より食費が上がってしまう家庭がある一方、飲食店では日没後に開店するのに1年でもっともかき入れ時となります。
イフタールは、単に断食明けの食事という位置づけではなく、家族や仲間とともに団らんする楽しいひとときです。
ついつい、食べ過ぎてしまう人がいるのも納得ですね。
イスラム圏には恰幅の良い人が多い印象ですが、ラマダンと無関係ではなさそうです。
イード:ラマダン明けのお祝い
イードとは、「祝福」という意味で、1か月間のラマダン期間が終わると、「イード・アル=フィトル」と呼ばれるお祭りで祝福しあいます。
イスラム教の祝日で、学校や会社も休みになります。
各家庭では、親戚や友人を集めてご馳走を振る舞い、ラマダンが終了したことをお祝いするのです。
このお祭りでは、服を新調したり、大掃除をしたり、遠方の友人や親せきに会いに行ったりするそうです。
まるで日本のお正月のようですね。
ラマダン期間中も旅行することはできますが、このイードの期間は、お店や観光施設が閉店したり、短縮営業になることが多いので、旅行者は注意が必要です。
次からは、ラマダン期間中に旅行者が注意するべきことを紹介します。
旅行はできる?ラマダン期間中に旅行者が注意すること
ラマダンの間、旅行をすることはできますが、注意することが3つあります。
- 日中はレストランが閉まっていることもある
- 観光施設も開館時間が短縮されたり、休館になることもある
- 飲食をする際は、ひと目を避ける配慮を
期間中、日中はレストランが閉まることが多いので、旅行者は注意が必要です。
ラマダンはイスラム教徒以外に強要するものではないため、旅行者向けに空いているレストランもちゃんとありますので、安心してくださいね。
とはいえ、空腹のときに、目の前で食事をされるとイライラしますよね。
イスラム教徒は日中は食事を摂らないので、公共の場で飲食をしたり、わざと人目に付くようなところで食事をするのは控えるのが、相手に対する配慮でありマナーだと思います。
観光施設も休館になったり開館時間が短縮される場合もあります。
ラマダン期間そのものよりも、ラマダン明けに休館となることが多いので、注意が必要です。
ラマダン中の旅行はイスラム文化を知る良い機会
ラマダン中は、いっけん不便が多いように感じますが、じつはイスラムの文化を身近に感じられる貴重な機会です。
わざわざラマダンにあわせていくのは難しいかもしれませんが、ラマダン期間に重なったらむしろラッキー!と思って、イスラム文化や独特の雰囲気を感じてみてくださいね。