今回は、北スペインにあるサンティアゴ・デ・コンポステーラという巡礼路について紹介したいと思います。
通常、「サンティアゴ巡礼」と呼ばれ、日本の「四国八十八カ所巡り」のように、決められた場所を巡りながら、クレデンシアルという「巡礼手帳」にスタンプを押していき、最終目的地である聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂を目指します。
ルートはいくつかありますが、最も人気のある「フランス人の道」は、フランスの国境から始まり800㎞ほどもあり、すべて徒歩で進むと1カ月以上かかります。
巡礼路はよく整備されており、道中にはカフェや巡礼宿(アルベルゲ)もあることから、信仰にかかわらず、毎年多くの人がこの巡礼路を歩いています。
標識もしっかりしているので、単独で歩いている人も少なくありません。
800㎞すべて歩かなくても、サンティアゴ・デ・コンポステーラに至る最後の100㎞を歩けば、公式の「巡礼証明書」がもらえることも人気の理由です。
日本からも、最後の100㎞を5日間ほどかけて歩き「巡礼証明書」を入手するツアーがいろいろな旅行会社から出ています。
この記事では 私が2015年に130㎞を歩いてサンティアゴ・デ・コンポステーラを目指すツアーに同行した時の様子を、豊富な写真とともに紹介したいと思います。
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サンチャゴ・デ・コンポステーラ巡礼路とは
サンティアゴ・デ・コンポステーラは、ローマ、エルサレムと並んで、キリスト教三大巡礼地のひとつです。
9世紀のはじめ、12使徒の1人である聖ヤコブ(=サンティアゴ)の遺骨が発見されたとして、この地に大聖堂が建立されて以来、毎年何万人ものキリスト教徒が、この地を目指して巡礼路を辿りました。
主にフランス各地からピレネー山脈を経由し、スペイン北部を通ってサンチャゴ・デ・コンポステーラへ至る巡礼路を指します。
すでに1000年以上の歴史をもち、多い時には年間50万人以上が巡礼しました。今でも年間約10万人が訪れる活気あふれる巡礼路です。
人々は800kmもの道のりを、数か月、時には数年かけて巡礼し、長い巡礼を続けることで信仰と向き合う貴重な時間となっています。
今では、キリスト教徒でなくても歩くことができ、様々な動機や背景を持った人々が巡礼に訪れています。
「道」が世界遺産に?!サンチャゴ・デ・コンポステーラは熊野古道と提携
サンチャゴ・デ・コンポステーラの巡礼路は、その文化的価値が認められ、ユネスコ世界遺産に登録されています。
じつは、「道」が世界遺産として登録されているのは大変珍しく、ほかには、日本の「紀伊山地の霊場と参詣道(熊野古道)」、メキシコとアメリカを結ぶ銀の交易路「エル・カミーノ・レアル・デ・ティエラ・アデントロ」、南米の「カパック・ニャン(古代インカ道)」と、この巡礼路の4つです。
- サンチャゴ・デ・コンポステーラ
- 紀伊山地の霊場と参詣道(熊野古道)
- エル・カミーノ・レアル・デ・ティエラ・アデントロ
- カパック・ニャン(古代インカ道)
そのなかでも、数100kmにも及ぶ「巡礼路」が世界遺産に登録されているのは、スペインの「サンチャゴ・デ・コンポステーラ」と、日本の「紀伊山地の参詣道(=熊野古道)」の2例しかありません。
「熊野古道」を有する和歌山県田辺市は、サンチャゴ・デ・コンポステーラと「観光交流協定」を締結し、連携して観光交流事業に取り組んでいます。
はじめての共同事業として、2015年から巡礼手帳を1つにまとめた「共通巡礼手帳」が作成されました。
2つの巡礼を達成すると「二つの道の巡礼者」として記念スタンプやピンバッジがプレゼントされ、「共通巡礼WEBサイト」に紹介されます。
私がサンチャゴ巡礼路を歩いたのは2015年ですが、その時はまだ「共通巡礼手帳」の存在を知りませんでした。
その後、2017年にプライベートで熊野古道の小辺路を歩いた時に「共通巡礼手帳」の存在を知って、それはそれはショックでした。
時すでに遅し、「2つの道の巡礼者」になるチャンスを逃してしまいました…
【体験談】サンチャゴ・デ・コンポステーラの巡礼路130㎞を歩いてみた
ここからは、実際の巡礼路を写真とともに紹介します。
巡礼路はホタテ貝と矢印をたどれば大丈夫
巡礼路は、写真のように矢印が示されています。
ラスト100㎞になると、サンチャゴ・デ・コンポステーラまであと100㎞を示す「モホン」と呼ばれるホタテ貝を連想させる標識も見えてきます。これは、複数の道がやがてサンチャゴ・デ・コンポステーラへ集結することを象徴しており、巡礼のシンボルにもなっています。
約500mおきにあり、分岐点には必ずあるので迷う心配はありませんが、注意深くチェックしながら歩きましょう。
巡礼のシンボルにもなっているホタテ貝は、同時に聖ヤコブのシンボルでもあります。
シンボルになった理由は、
- 聖ヤコブの杖にホタテ貝が付いていた
- 聖ヤコブの生家が漁師でホタテ貝を紋章としていた
など、いくつかの説があります。
また、巡礼者の服装は、巡礼がもっとも盛んになった12世紀に、大きな帽子に裾の短い外套、長い杖にホタテ貝の飾り、水筒代わりにひょうたんと定められました。
今もその名残で、巡礼者はホタテ貝を身に着けて歩くのが一般的です。
帽子も杖も水筒も、形や素材こそ変わりましたが、現在も変わらず「歩く旅」のマストアイテムですね。
巡礼路はどんな道?誰でも歩ける?
巡礼路のほとんどは、このように整備され、平坦なところが多いです。
1日に30㎞~40㎞歩く巡礼者もいますが、私たちは1日20㎞ほどのペースで7日間かけて130㎞を歩き切りました。
日本の旅行会社が発表しているツアーは、だいたい1日20㎞ほどを歩くものが多いようです。
まったく運動していないのであれば大変かもしれませんが、日ごろから体力つくりに励んでいる人であれば、無理なく歩き通せる距離かと思います。
ところどころ、なだらかな丘陵地帯を超えていきます。
私が訪れた5月下旬は、写真のように新緑が美しい時期で、初夏の陽気を感じながら爽やかな緑の中を歩くことができました。
【馬や自転車でもOK!】サンチャゴ・デ・コンポステーラ「巡礼証明書」をもらう方法
「巡礼証明書」を手に入れるには、サンチャゴ・デ・コンポステーラへ至る道を
- 徒歩で100㎞以上
- 馬で100㎞以上
- 自転車で200㎞以上
進んで到達することが条件です。
巡礼前にクレデンシアルという「巡礼手帳」を手に入れて、巡礼途中の宿やレストランなど指定された場所でスタンプを押すことで、実際に訪れた証拠となります。
現在の時代において、まさか馬で巡礼する人なんているのかな…
と思っていましたが、なんと結構いてビックリしました!
徒歩が圧倒的多数ですが、次に多いのは、自転車よりも乗馬の人だった印象です。
馬に乗って颯爽と駆けていく人を横目に、私たちは一歩ずつあゆみを進めていきました。
大聖堂まであと5㎞!歓喜の丘
サンチャゴ・デ・コンポステーラまで残り5㎞の地点にあるのが、この「歓喜の丘」。サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指した巡礼者たちが、はじめて大聖堂の3本の尖塔を目にして歓喜の声を上げたと言われている場所です。
実際、私もこの場所に立つと、はるばる歩いてきたことに胸があつくなりました。
しかし、涙を流すのはもう少しお預け。大聖堂まで残り5kmほどをかみしめるように歩きます。
【感動】サンチャゴ・デ・コンポステーラの大聖堂
1週間130㎞の巡礼を終えて、大聖堂の前に着いた時には、さすがにこみ上げてくるものがありました。
一緒に歩いたお客様も、お互いをたたえています。大聖堂の前では多くの巡礼者たちが、歓喜の声を上げ、涙を流し、抱き合っていました。
【何のため?】サンチャゴの巨大香炉ボタフメイロの儀式
サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂では、巡礼者のために、ミサと「ボタフメイロ」と呼ばれる巨大香炉が炊かれる儀式があります。
長さ150m、重さ80kgもある巨大香炉を振る「ボタフメイロ」の儀式は、元々は長い道を歩いてきた巡礼者達の体臭を緩和するためにはじめられました。
現在では、巡礼達成の象徴として、お互いをたたえ合う神聖な儀式となっています。
私たちも、はるばる日本から来て130㎞を歩き切ったことが紹介され、周りにいた多くの人たちから祝福をうけました。
自分の足で歩き切ったから達成感と大きな感動に包まれました。
サンチャゴ・デ・コンポステーラを歩くツアー
己と向き合うためには、ひとりで黙々と歩くのが一番ですが、計画を立てたり巡礼宿を手配したり、何かと準備が大変です。
サンチャゴ巡礼に興味があるけど、一人で行く勇気はない
ルートの決め方や手配が心配
そんな方は、日本発着の添乗員付きツアーに参加するのも一つの方法です。
ツアーに参加するメリットは
- 添乗員、現地スタッフ同行なので安心
- 伴走車がいるので、いざとなったら車を利用できる
- 1日分の荷物のみ持って歩けばよい
- 巡礼宿ではなくホテルに宿泊するのでしっかり疲れが取れる
- レストランも予約しているので食いっぱぐれの心配なし
ほとんどの旅行会社は、伴走車をつけているので、歩き疲れてしまったらその車に乗ってホテルまで回送が可能です。
個人で歩くとなると、数日分の荷物も全て持たなければいけませんし、体調が悪くても進み続けなければいけません。ツアーなら、身軽に1日分だけの荷物で歩けるので、負担は最小限ですみます。
巡礼したいけど、個人旅行はちょっと…という人は、ぜひツアーの利用を検討してみてくださいね。
ツアーの団体行動が苦手な人は、少し金額が高くなりますが、プライベートツアーに参加する方法もあります。