高校留学をする場合、帰国後の進路について不安がある高校生は多いと思います。
特に、同級生と一緒に「進級」するか、休学扱いで留学したあと「留年」して1学年後輩と一緒に勉強するかを決めなければいけないことは、悩ましい問題です。
多くの場合、「進級」か「留年」かは留学前に決めておく必要があります。
ただでさえ、留学のことでいろいろと準備をしなければならないのに、帰国後のことまで考えておかなければならないのは大変ですよね。
この記事では、1年間の留学後、「留年」して高校生をやり直した私が感じた、「留年」することのメリットとデメリットを紹介します。
「留年」という言葉が非常にネガティブなので、多くの高校生や親御さんは帰国後「留年」せず、「進級」を希望することが多いようです。
それどころか、「留年しなければいけないなら、留学を諦める」という意見さえ見受けられます。
しかし、高校留学のあと、「留年」することはメリットも多いです。
「留年」をはじめから否定するのではなく、「留年」も視野に入れて留学後の進路を検討されると、可能性が広がるかと思います。
また、私は大学受験や就職・転職活動において、高校で留年したことによる不利益は一切受けたことがありません。
むしろ高校生で1年間も留学したことを高く評価してくれることの方が多いです。
そのため、「留学すると留年しなければならない」という理由のみで留学を諦めているとすれば、これからのあなたの長い人生において、逆に将来の可能性を狭めてしまっています。
この記事を読めば、高校留学後の「留年」は、実はメリットが大きいことを理解していただけるはずです。
進路の選択肢の一つとして「留年」も視野に入れることで、その後の人生の可能性を広げることができます。
もちろん、デメリットもお伝えしますので、しっかりと理解した上で、どちらが自分に合っているかを検討する際の参考にしてください。
高校留学後「進級」or「留年」
高校留学後の進路としては主に2つあります。
一つは、留学中の単位を認めてもらうことで、帰国後は次の学年に上がる「進級」です。
もう一つは、休学扱いで留学し、帰国後は出発時の学年に復学する「留年」です。
- 「進級」…単位認定をすることで、帰国後は入学時の同級生と同じ学年に進級する
- 「留年」…休学扱いとすることで、帰国後は1学年下の後輩と一緒に勉強する
単位認定で進級する場合は、入学時の同級生と一緒に進級し卒業できますが、1年分の日本での学習が抜けているので、大学一般受験をする場合には学習の遅れを取り戻すのが大変です。
休学して留年した場合は、同級生一緒に進級または卒業できないデメリットがありますが、日本の高校に3年間在籍することで、大学受験の準備に余裕ができ、選択肢が広がります。
私は、高校3年生の5月から留学し、翌年の3月に帰国しました。
単位交換も認められていたので、そのまま卒業することもできましたが、大学受験のことも考え、留学中は「休学」扱いとし、帰国後に「留年」して1つ下の学年と一緒に高校3年生をやり直しています。
それぞれにメリット・デメリットがありますが、この記事では私が実際に経験した「休学して留年する」ことに焦点を当てて、メリットとデメリットを紹介します。
高校留学で留年するデメリット
高校留学後、出発時の学年に復学し「留年」した際、私がデメリットと感じていたのは次の2点です。
いずれも今思えば些細なことで、思い悩むに値しないような問題ですが、高校生という多感な時期ゆえに葛藤も大きかったです。
留学を検討している人や、これから留学する人は、「こういうこともあるんだな」と心に留めておくと、帰国後の気苦労が少し和らぐはずです。
同級生と一緒に進級・卒業できない寂しさ
高校留学のあとに留年すると、同級生と一緒に卒業できないことが一番残念なことでしょう。
特に、中高一貫で長い付き合いがあったり、部活動などで共に青春を駆け抜けてきた仲間がいる場合、自分だけ卒業できないのはとても寂しいものです。
私は、高校3年生の5月から翌年の3月まで留学したので、帰国とほぼ同時に同級生が卒業してしまいました。
4月からの新学期は、知らない人ばかりの後輩に交じっての授業で、はじめは転校生のような孤独感がありました。
しかし、すぐにクラスメイトとも仲良くなれ、今でも連絡をとったり、会ったりするほどの親友もいます。1年長く青春を謳歌した気分です。
よく考えてみてください。
留学すると、海外という知らない地で、しかも英語で仲間をつくらなければなりません。
そうした経験を得て帰国したあなたは、コミュニケーション能力や行動力に自信が付いているはずです。
1つ下の後輩と友好関係を築くことは、そんなに苦労することはないでしょう。
はじめは気恥ずかしさのようなものがあるかもしれませんが、すぐに慣れます。
社会人になれば、年齢関係なく、さまざまな人と関わります。
1つくらいの年の差は気にすることはありませんよ。
高校生は、人生において最大の青春の舞台ですので、仲間と一緒に卒業したいという気持ちはとても分かります。
しかし、あなたが本当に手に入れたいことは何でしょうか。
友達と卒業することでしょうか。
留学して、英語力を磨いたり異文化理解を深めることで、その後の人生で活躍することではないでしょうか。
友達とともに卒業するという人生イベントを手放してでも、私は挑戦する価値が十分にあるが思います。
「留年」という言葉への抵抗感
当時は、「留年」という言葉と、1学年後輩と一緒にもう1年高校生をやることに対して、ものすごく抵抗があり、恥ずかしい気持ちもありました。
今思えば、なぜそんなに敏感になっていたのか不思議ですが、お年頃なので仕方なかったのかなと思います。
大人になった今では、当時の自分にこう言ってやりたいです。
長い人生、若いうちのたった1年。
高校に1年長く在籍したって、何も恥ずかしいことではない。
何物にも代えがたい留学という経験をした結果の留年じゃないか!
あなたがもし、帰国後に留年することに引け目を感じているのであれば、まったくそんなことはありません。
堂々と後輩に混ざって勉強すればよいのです。
長い人生を振り返った時に、その1年は決して無駄ではなかったと分かる日が来ます。
国を挙げて高校生の留学をサポートするプロジェクトである「トビタテ!留学JAPAN」の発起人であり、リーダーである船橋力さんが、テレビ番組(日テレNEWS23「留年気にせずに」100年時代の留学事情)で次のようなことをお話しされています。
――これまでだと留年は、ちょっと後ろめたい思いもありましたが。
これからは100年時代ですね。100年時代において若いときの1~2年は関係ないと。企業の採用担当者も、1年ほど全然違った体験をしてもらってきたほうがいいと。確かに、経済的に、家計を早く自立してささえなくちゃいけないという人もいるかと思うんですけど、今、留学の場合、留年しても学費はタダとかの免除が出てきているので、そういう面も含めて結構、留年も増えています。ここは良い経験をしたほど、良い大人になって良い社会人生活を得られるのではと思っています。文科省から怒られるんじゃないかと思って書いてますけど、「留年上等」ということで。
――それだけ同じ高校の中でも密度の濃い生活が送れるという意味ですかね。留年という考え方もこれから改めていかないといけないかもしれませんね。
むしろ学年が落ちても友達が倍できるみたいな。
このメッセージ、「留年」という言葉にモヤモヤしていた留学前の私に届けたいなと思いました。
だから、同じように「留年」に悩んでいる人に届いてほしいなと思い、紹介しました。
全くその通りなんです。
長い人生の1年間、留学という素晴らしい経験をしたあなたは、留年という言葉に引け目を感じる必要はまったくありません。
高校留学で留年するメリット
高校留学の後に「留年」するデメリットについてまとめましたが、私にとってはデメリットはその2つくらいでした。
これからお話するメリットの方が大きかったです。
私が考える「留年」のメリットは3つあります。
留学中は英語学習や国際交流に集中できる
留学中は、英語の学習に精一杯なので、受験科目を勉強する余裕はありません。
私は、多少は見る機会もあるかな?と各科目の参考書を持って行っていましたが、まったく手を付けることなく帰国しました。
また、留学先の高校で、日本と同じ授業科目が受けられるとは限りませんし、国語や日本史などはそもそも授業にないでしょう。
なにより、せっかく留学をしているのに、ひとりで黙々と受験勉強をしているなんて、それこそ留学が台無しです。
「帰国後は留年する」と決めておくことで、留学中は英語の学習や国際交流に集中することができます。
帰国後、受験に向けて時間的な余裕があり選択肢が広がる
何年生で留学に行くか、行先の学校年度により何月に帰国するかにもよりますが、「留年」することにより、受験までの時間的な余裕が生まれることはメリットとなります。
私は、高校3年生の5月から翌年の3月までフィリピンに留学したため、帰国後は4月から3年生をやり直すことが出来ました。
4月の年度始まりからやり直すことができた点は、アメリカやカナダ、ニュージーランドへの留学にはないメリットでした。
私が通う高校は進学校だったため、ほとんどの学生が大学一般入試を目指しています。
私は、一般入試対策をしながら、並行して国立大学のAO入試に挑戦することにしました。
今でこそ、国立大学のAO入試も一般的になりましたが、当時はまだ先駆け的な存在で、情報がなく苦労したのを思い出します。
AO入試の出願は7月ごろと早いため、帰国後すぐの対策が必要でした。
AO入試は自分の強みをアピールした者勝ちです。
留学中の経験と、そこから得た学び、その学びを大学の学問でどのように昇華させたいか、といったことをびっしりとレポートに綴りました。
書類選考に通過し2次面接に行くと、2枠しかないのに20人近いライバルが待合室にいてひるみましたが、逆に開き直ったことで緊張せず、堂々と臨めたことが良かったようです。
合格の知らせが届いたときは、本当にうれしくて、今振り返ってみても人生で最大級の喜びでした。
正直、英語以外の科目については、1年間の遅れを取り戻すのはかなりしんどく、一般入試での進学は厳しい状況でした。
留学の経験があったからこそ、英語力だけではなく、発言力や行動力などの面においてもAO入試を勝ち抜く力を養うことができたと理解しています。
今では、大学受験もいろいろな方法が行われています。
英語に強い私立大学であれば、留学した経験は即戦力として生かせますし、TOEICなどで優れた成績を保有している場合は、学費が一部免除されるような制度もあります。
AO入試や推薦入試など、受験科目を実施しない受験もたくさんあります。
一般受験にこだわらず視野を広げることで、留学経験を最大限に生かして大学受験にのぞむことができるでしょう。
もし、あなたが1年生や2年生で留学する場合、留年を選択すると、私よりももっと時間的に余裕があります。
留学先として人気のアメリカやカナダは9月から翌7月まで、ニュージーランドは2月から翌12月までのことが多いです。
何年生で留学するか、いつ帰国するかと併せて、考えていくと良いかと思います。
留学前から大学受験のことを考えるのは大変だと思いますが、帰国後の可能性を広げるために、少しでも大学受験について調べておくことが大切です。
友好関係が広がる
同級生が先に卒業してしまって寂しいと感じる反面、1つ下の学年と学校生活を送ることで、たくさんの仲間と友好関係を築くことができます。
実際に、私も留年したクラスで出来た友達と、いまだに連絡を取り合っています。
高校生というのは青春真っただ中ですので、その間にできた友達は「一生の友」でもあります。
留学前・留学中・留学後と、3つの期間にわたって新しい人間関係が生まれ、繋がりができるのは貴重な経験だと思います。
このように、高校在学中は気持ちの面でデメリットとなる部分もありましたが、私の場合、受験対策に余裕が出来たり、友好関係が広がるなどメリットの方が大きかったです。
高校留学で留年すると、就職に不利か
もう一つの心配事に、無事に大学に進学できたとして、就職活動の際に「留年」が不利にならないかというのがあります。
高校に4年間在籍していることで、就職などの際に不利にならないか、心配されている親御さんは多いと思います。
しかし、私は就職や転職活動において、そうした不利益は受けたことはありません。
むしろ、高校生で1年間も留学したことを高く評価してくれる企業ばかりです。
このブログの別の記事【高校留学は意味がない?1年間留学した経験者がメリットとデメリットを紹介】でも伝えていますが、高校留学をする人は、全高校生の1.4%しかいません。
6カ月以上の留学となると、わずか0.14%です。
そんな貴重な経験をした人材を、企業が不利に扱うはずがありません。
10代の若い時期に、親元を離れて異国の地でやりぬいた努力を高く評価してくれるはずです。
国際社会において、積極的に挑戦し、活躍しようとする人材は企業からも高く評価されるので、こうした心配は無用です。
まとめ 高校留学で「留年」してもメリットが大きい
高校留学による「留年」は、人生において不利に働くどころか、留学に集中できたり、受験の準備に余裕が出来たりとメリットも大きいです。
「留年」という言葉の印象が良くないので、周りの反応が気になるお年頃の高校生だと敏感に反応して避けようとするのは仕方がないことだと思います。
しかし、長い人生を振り返った時に、1年留年したことで損をするようなことは、まずありません。
就職活動の際には、高校留学の経験を高く評価してくれる企業の方が多く、不利になることもありません。
あなたが将来どのようなことをしたいのか、それを叶えるためにはどんな大学に行ってどんな勉強をするのかをしっかりと考えましょう。
そのうえで、受験のための準備期間として、「留年」した方が夢に近づくのであれば、堂々と留年して、勉強をすればよいのです。
周りの反応を気にする必要はありませんよ。
あなたが信じる道を進んでください。
応援しています!