この記事は、旅行会社に約10年間勤め、世界103ヵ国を訪問した元海外添乗員が、「添乗員のメリット・デメリット」をまとめたものです。
記事を読むことで、添乗員になるとどんなメリットや魅力があるか、デメリットや苦労することは何なのかを理解することができます。
添乗員になるメリット5選
いろいろなところに行ける
仕事とはいえ、いろいろな場所に行けるのが最大のメリットです。
私も、添乗員をやっていなければ知らなかった国や、自分では絶対に参加できないような高額で贅沢なツアーにも、同行させていただくことができました。
もちろん、誰でもすぐに行きたいところに行けるわけではなく、はじめのうちは何度も同じ国に添乗して経験を積みます。
添乗員としてのスキルを磨き、お客様と信頼関係を築くことができれば、会社からの評価も上がり、マイナーな国のツアーや高額のツアーも任せてもらえるようになります。
添乗員は、基本的に会社から「次はこのツアーに添乗してくださいね」とアサインされます。
十分にスキルが身に付き、どの国を任せても大丈夫だと思われたら、時には「どこか行ってみたいところや、やりたいツアーある?」と会社から声がかかるかもしれません。
お客様からの信頼が得られるようになれば、「このツアーに行きたい!」といった希望も通りやすくなります。
私は、3年くらい経ったころから、少しずつ自分の希望も通してもらえるようになりました。
そうなれば、仕事の幅が広がって本当に楽しくなります!
接客力に磨きがかかる
添乗員は「究極の接客業」とも言われます。
世の中にはさまざまなサービス業が存在しますが、添乗員ほどお客様と【長く】、そして【深く】、時間を共有する仕事はありません。
常にお客様と接しているので、接客力が磨かれます。
ツアーが7日間であれば、添乗員は7日間、ずっとお客様と一緒です。それこそ、起きてから寝るまで、ずっと行動を共にするわけです。
その中で、添乗員は、お客様に旅行を楽しんでいただけるよう最善を尽くします。
例えば、「これをお土産に買いたいんだけど、どこで買えるかしら?」と質問されれば、自分で調べたり、ガイドやドライバーに聞いてお答えします。
答えるだけでは不十分で、ツアー中に買えるように時間を調整したり、空き時間に一緒に買いに行ったりして、お客様の要望を可能な限り叶えてあげるように動きます。
他にも、お誕生日のお客様がいたらサプライズでお祝いをするなど、お客様に喜んでいただけることを常に探しているのが添乗員と言っても過言ではありません。
「どうしたらこのお客様が喜んでくれるかな」を常に考えているで、自然と接客能力が鍛えられ、おもてなし精神が身につくのもメリットといえます。
臨機応変な対応力が身に就く
「トラベル(旅行)はトラベルの連続」とも言われるように、ツアー中はさまざまなトラブルが発生します。
例えば、「高速道路で渋滞に巻き込まれてレストランに間に合わない」といったものから、「初日の出を鑑賞するツアーなのに天候が悪くて朝日が見えない」「お客様がパスポートを紛失した」というものまで、本当にさまざまです。
そして、そのトラブルの多くは、添乗員の責任ではないものがほとんどです。。
それでもトラブルが起きた時には、ツアーへの影響ができるだけ小さくなるように努めなければなりません。
例えば、高速道路で渋滞に巻き込まれた場合には、レストランに事前に連絡をして到着時間が遅れても問題ないか交渉したり、下道を使って移動するルートをドライバーと相談したりして、トラブルを解決していきます。
時には、トラブルのせいでお客様がお怒りになってしまうこともありますが、そうした時には、理由を説明したり、謝罪したりしながら、ツアーを進めます。
ツアー現場には、助けてくれる上司や同僚はいません。現場の最前線に立ち、トラブル対応をするのが添乗員の重要な仕事のひとつです。
時にはホテルやレストランなどの観光施設、時にはガイドやドライバー…と、多方面に交渉と提案を繰り返していく中で、トラブルに対して臨機応変に対応する力が身に付きます。
また、事前にトラブルが起こらないよう、常に先を予測しながら段取りを整える癖がつきますので、マルチタスクに対応する力も付いてきますよ。
お客様から感謝される
一つのツアーが終わり、解散するときに、「楽しかったよ!ありがとう!」「また参加させてね!」と言われる時の、嬉しさ、達成感は半端なかったです。
ツアー中、どんなに苦労しても、辛いことがあっても、お客様の別れ際のひとことで、すべて報われる気がして、もっと添乗員として成長したいと思えました。
自分もお客様と旅行の楽しいひと時を共有しながら、お礼まで言っていただける、こんなありがたい仕事はないと思います。
これこそが、添乗員の醍醐味だと思います。
マイレージが貯まる
特に海外添乗員の場合は、海外へ定期的に行くため、マイレージが貯まります。
基本的には、このマイレージは自分のものとして利用できますので、旅行好きの人には願ってもいないメリットかと思います。
私も、年に2~3回ほどは国内旅行や帰省にマイルを使っていました。
頻繁にツアーに同行する添乗員であれば、マイレージカードのランクもアップしてきますよ。
仕事でマイルを貯めて、お得に自分の旅行ができるなんて、嬉しいですよね。
添乗員になるデメリット5選
トラブル対応/クレーム対応に心が折れる
先ほどもお話したように、旅行中はとにかくトラブルが発生します。
添乗員は、その一つ一つに対応して問題を解決していかなければなりません。
時には、添乗員としてどんなに気を付けていても、トラブル続きのツアーになってしまうこともあります。
そんな時に、トラブルやその対応に納得のいかないお客様からクレームをいただいて、精神的にまいってしまうこともありました。
どんなにトラブルが起きても、お客様からクレームをいただいても、現場では、お客様の相手はすべて一人でこなさなければなりません。
「ちょっと上司に代わりますのでお待ちください…」とはならないわけです。
人が好きで、お客様に喜んでもらうのが好きで、やっている仕事なのに、時にキャパオーバーとなってしまい、精神的に疲れてしまうのが、添乗員として一番苦しかった点です。
しかし、経験を積んで、さまざまなトラブルにもうまく対応できるようになると、トラブルさえ楽しんで乗り越えられるようになった気がします。
「トラブル時こそ、添乗員の腕の見せどころ」と思えるようになってからは、トラブルが起きても慌てずに堂々と対応できるようになり、仕事内容にも自信がつきました。
拘束時間が長く体力的にきつい
添乗員の仕事は、朝早くから夜遅くまで続きます。
例えば、宿泊している場合には、朝は朝食会場の確認をしたり、ホテルに到着してからもお部屋のチェック、夕食のご案内など、ツアー以外の時間も仕事をしているため、とにかく拘束時間が長いです。
また、ツアー中は常に気を張っているため、睡眠が浅くなることも多々あります。
私の場合は、翌日早い出発だと寝坊しないか心配になったり、トラブル発生時には、対応に問題はなかったか振り返ったりしていると、寝付きが悪くなることが多かったです。
そうすると、知らず知らずのうちに寝不足になり、体力的につらいこともありました。
また、海外添乗の場合は時差があるので、身体が慣れるまでは大変です。
時差については、まったく負担に感じない添乗員仲間もいましたので、個人差が大きいかもしれません。
「添乗員は体力勝負」と言われますが、日ごろから体調管理をしっかりとして、体力をつけておくことが大切です。
現場で体調を崩しても、代わりはいません。「体調管理も含めて仕事」と意識して、仕事と向き合っていきましょう。
友達と予定が合わない
基本的に、お盆や年末年始はツアーに同行しているので、そうした時期に友達と遊んだり、旅行に行ったりするのは期待しない方がよいでしょう。
私も、10年間の添乗員生活で、日本で年越しをしたのは3回でした…。
特に盆正月は旅行のハイシーズンなので、当然と言えば当然ですが、新卒で仕事を始めたころは、なかなか友達とも遊べず、悲しかった思い出があります。
収入が安定しない(派遣添乗員の場合)
添乗員として働くには、大きく分けて2つの方法があります。
・旅行会社に勤務しながら添乗に出る(私はこちらでした)
・派遣会社に登録をして添乗に出る
旅行会社に勤務している場合は、添乗に出ていない時間は出社して業務にあたりますので、基本的に月給制です。
月給に加えて、添乗のレベルに応じて1日につき数千円の添乗手当がつくことが多いです。
そのため、月による収入の差はあまり大きくありませんでした。
派遣会社に登録して添乗する場合には、【添乗した日数×日当】が給与となりますので、添乗に出れば収入が増えますが、出なければ全く収入がない、という状況になってしまいます。
繁忙期と閑散期で収入の差が大きくなってしまうのが特徴です。
添乗員だけやりたいのか、それとも企画や販売なども含めた旅行業務全般をやりたいのか、まずはそこから考えて、旅行会社に就職するのが良いか、派遣会社に登録するのが良いかを決めていくと良いでしょう。
このあたりは、また別途お話できればと思います。
添乗員のメリット・デメリット
いかがでしたでしょうか。
添乗員は、仕事でいろいろなところに行ける点が大きなメリットですよね。
また、接客スキルや臨機応変に対応する力が磨かれ、これらは日常生活においても十分に生かすことができます。
反面、常にお客様と接しているので、精神的に疲れてしまったり、体力的にはハードな面があります。
しかし、私は、それらの苦労を超える楽しみややりがいが添乗員にはあると思います。
実際、デメリットよりもメリットを感じる方がはるかに大きかったです。
添乗中に起こるトラブルを、さまざまな方面に粘り強く交渉することで切り抜けた経験や、お客様からのクレームに対応した経験、お客様から感謝していただいた経験は、添乗員生活以外の人生においても役立っています。
ぜひ、これから添乗員を目指す人は、頑張ってほしいと思います。
参考になれば幸いです。